Adobe Camera Raw
「ワークフロー」と書きましたが、現像手順などの作業工程ではなく、カラーマネジメントを含めた現像作業を行う為の色に関しての「環境設定のワークフローオプション」について書いておきます。*ワークフローオプションについては「CameraRawの環境設定」で詳しく説明しています。
カラーマネジメントのページでも書きましたが、カラーマネジメントは「運用する画像の色」を各種デバイス、アプリケーションで正しく認識・表示出来るように各々の設定を行い、色を運用することです。
RAW現像の場合は、カメラから「目的の画像の色」で「書き出す」までにどれだけのデバイスとソフトの色が関わるのか?今一度再認識することも大事かも知れません。
「カラーマネジメント」に関しては、カラーマネジメントページをご覧いただくとして、ここではCameraRawの仕組みからカラーマネジメントを説明させて頂きます。
あらためて、RAW現像ソフトの「ワークフローのカラースペース(作業用色空間)」について再認識しましょう。
♦️CameraRawの環境設定「ワークフロー(オプション)」の色空間♦️
🔴ワークフロー(オプション)のカラースペースとは
CameraRawの『ワークフロー』はプレビュー中央下にある「カラースペース」と、Photoshopに展開する「bit数・画像サイズ・ppi」の表示部分になります。
それぞれの目標設定を変更するには、この表示部分をクリックするか、左上の環境設定から「ワークフロー」のところで各種変更します。
CameraRawのワークフローにある「カラースペース」は、以下の2つの目的で利用されます。
・CameraRaw自体の色調補正として利用するカラースペース『作業用色空間』
・Photoshopに展開する画像として埋め込まれる「カラースペース」
作業用色空間が固定だったり、その仕組みがなかったりするRAW現像ソフトもあるので、ユーザーによっては認識が甘い方もいるようです。
また、「白飛び・黒潰れ」の会話に比べて、色に関する再現域の「色飛び(色飽和)・色階調潰れ」の認識が少ない方も多く見受けられます。
作業色空間を意識せずにRAW現像を行うことのないように大事な部分を確認して見ましょう。
🔴CameraRawの作業用色空間としての「カラースペース」
デジタルのページでも書きますが、RAW現像ではここが一番大事な部分です。プロ用と言われるソフトでもこの「作業用色空間」をしっかりと明示する仕組みのものは少なく、またそもそもその仕様がないものもあり、ユーザー側の認識不足で正確に色を扱えいない場合もあります。
まず、仕事として「流通・運用する画像データ」や「個人でプリントもしくはデバイスによる表示」を目的としたものであっても考え方は同じです。
RAW現像や色調補正する画像データの『目的』は、『どこで表現・閲覧するために使用するのか?』が調整前のスタートになります。
*上の画像は、一般的に画像データに使われるカラースペースですが、再現出来る色の差はかなりあります。演算処理のための「データ量」や「色素材量」は『大は小を兼ねる』的に計算上は多い方が良いです。しかし逆は無理があります。当然「無いもの」からはそれなりの画像しか作れません。昨今は『AI』によりその視覚的な精度も上がりましたが、それでもまだまだではあります。
広い色空間を持つ「カラースペース」を当然のように有り難がり重宝すると言う傾向もありますが、デバイスや出力側の「色再現域の限界」との差を認識しなければなりません。
『画像の目的とは何か?』それは「印刷用途」だったり、自分で行うプリントだったり、そのプリントもプロ用のプリンターなのか色材の少ない民生機なのか、それともお店に出すのか。CMYKはもちろんインク数や紙によっても色の再現幅は大きく変わります。
またWEB掲載用途でも、それがPCの場合なのか、iPhoneなどのスマホやタブレットなのか。
それらその全てで「再現出来る色の幅と違い」があり、限界があります。
Appleの「M3 MacBookPro」は、ベースをP3に振っているのもあってディスプレイの色域は、ほぼ『DisplayP3カラースペース』です。その結果、DisplayP3の画像の色域はほぼフルにカバーしますが、「AdobeRGB」の「緑-青」の広色域(彩度)はカバーしておらず色再現が出来ません。つまり印刷用としての「AdobeRGB」データを扱う場合と比べると無理な範囲があります。またCMYKのカバー率もあまりよくはありません。
ColorEdgeは「DisplayP3」には少し足りない部分もありますが、業界で運用する標準カラースペースをほぼカバーしています。
いずれにせよ、あらためて確認してもよく画像処理で使われる「ProPhotoRGBカラースペース」はその色空間を表示・再現出来るモニターはありません。
カメラマンで仕事の場合は、WEB用途だから「sRGB」納品。印刷用途だから「AdobeRGB」納品と、一応の決まりとはなっています。
昨今は個人やWEB、SNSなどの用途で、Apple準拠で合わせるなら「DisplayP3カラースペース」となります。
画像を「書き出す」際に、カラースペースをあてて色を確定する以上、その画像は「確定した色」以上の広色域(彩度)の色は当然ながら表現出来ません。デバイス側が広色域であってもです。
だからこそ、『最低限』書き出す際に使用する『カラースペース内』で破綻のない色や階調を整えるのが処理の前提です。
ワークフロー(作業色空間)を書き出しのカラースペースに合わせることで、その「書き出し先の色空間」では、どの色が飽和、階調破綻するのかを『プレビュー・ヒストグラム・色域警告』で確認することがRAW調整で「目的に合わせた画像」作成になります。
*上の例はRAW現像ソフトで作業色空間がProPhotoRGBなのに、その認識が甘く、見た目綺麗だからとそのまま「sRGB-JPEG」で書き出した場合の色の飽和と色の階調破綻の例です。
画像処理でよく見聞きするのが、「色の再現性を...」とか「階調豊かな...」など、良い表現で説明されますが、これらを文字通りに表すのは、目的(ゴール)の色再現幅の範囲内の事であって、それ以上の範囲外の色ではありません。
画像の色は必ず「確定」させなければなりませんし、カラースペースは絶対に使用します。なので、その使用するカラースペースの再現域で色の階調破綻と飽和がないようにすることが大事になります。
つまり、「WEB用だから、sRGBで良いと言われたから」となれば画像はsRGBで作成します。結果的にsRGBプロファイルで色を確定するのですからsRGBを超す範囲の色(彩度)は切り捨てます。もうデータとしてありませんし、再現出来ません。
だからAdobeRGBで作成すると言う場合でも、今度は「DisplayP3」の範囲しか表示できないディスプレイのデバイスでは「緑の広彩度」は再現出来ずに飽和します。
目的の為の画像作成とは、デバイス表示にしろ出力にしろそのゴールで階調破綻が少ないデータ作成と言うことです。仮にsRGBデータでは切り捨てる色(彩度)があったとしても「残りのその範囲で階調豊かなデータ」を作成すれば、少なくともその部分の破綻は少ないと言うことになります。
何のために処理をするのか?それを正確に判断し、見えるところ、見えないところがあると言うことを作成側も受け取る側も理解することが大事になり、トラブルなどを少なくする方法になります。
「作業色空間をProPhotoRGB」にしているRAW現像ソフトがありますが、これは本来データが持つ色を余すことなく正確に調整を行えると言う理屈ですが、事実としてはその「ProPhotoRGB」を正確に表示出来るモニターが存在しません。
見えていない色を正確に調整する事が出来るとは個人的には思いません。結果、プレビュー上で綺麗に見えていたのに、「sRGB-JPEG」で書き出すと諧調が破綻し色が飽和すると言うことが非常に多くあります。「階調豊かな...」とは結果的に「書き出した」目的のプロファイル画像での話であるべきです。
「何のために色を大事に処理する」のか、改めて一度ワークフロー(作業色空間)を考えてみることが良い画像作りに繋がると思います。
印刷の場合、そのためにカメラマン側でCMYKの範囲に押さえ込んだ「RGB画像」を作るのかと言うと、矛盾していますがそれは間違いです。sRGBよりもAdobeRGBの方が印刷基準になっているのは、DTP含めて現実には色材の色再現がsRGBよりも広い部分が多いからで、暗部の色のカバー率もAdobeRGBの方がカバーしているからです。
印刷での色の追い込みは基本的には印刷側で行うことが前提です。CMYKと言ってもデータの扱い、機械や紙、インクの種類、湿度など環境含めてカメラマン側で正確に扱える訳ではありません。CMYKデータはその後の処理で色数に制限が出るので直しにも限界が出ます。カメラマンはRGB画像を正しく、基準となっている「カラースペース内」で解像良く、ノイズ含めて破綻のないデータ作りを心がけます。
画像作成のための作業色空間の考え方は大きく2つになります。
・目的の標準カラースペースの色再現範囲に合わせて作成
・出力が目的の場合や、もしくは画像の色をフルに活かしてレタッチするためにあえて大きなProPhotoRGBで作成 *
*しかし、その場合は最終的に目的がはっきりした場合に、階調破綻のないように再度「色の押さえ込み補正」が発生します。印刷目的でないなら二度手間で、余分に手間をかけることになります。
スナップデータは勿論ですが、カメラマン側で大きな色処理や繰り返し「彩度」を含めた色処理をしないのであれば、ゴールは「AdobeRGB」か「sRGB」もしくは「DisplayP3」になります。この範囲で色再現を十分とするのであれば、最初からその範囲内で階調の整った破綻のない画像作成をするべきです。
🔴Photoshopに展開する画像に埋め込まれる「カラースペース」
CameraRawから「開く」でPhotoshopに開くときは、ワークフロー(オプション)で指定されたカラースペースで展開します。
超光沢や特色の多いカラープリントなどは、色の再現幅が「AdobeRGB」よりも広いエリアがあります。
この場合は、出力先の色域がAdobeRGBより広いので、AdobeRGB画像で出力できる範囲を失わせるのは勿体無いと言うことになります。
とは言え、そのような範囲も実際には再現出来る部分はごくわずかです。また、繰り返しになりますがその色が正確に見えるデバイスもほぼありません。
「運用・流通するデータ」とする場合には、やはり「AdobeRGB」での作成が望ましいです。
また、その作品をsRGBで運用する場合は、ProPhotoRGBからsRGBでは、再現出来ない幅も多いため飽和する範囲も多くなりますし、レタッチで色を抑えると結局は見え方がかなり変わります。
個人的には、写真家の作品作成などよほどの精細で正確な運用でもない限り『ProPhotoRGB画像』での画像作成、レタッチにはあまり意味があるとは思えません。
🔴CameraRawフィルターの作業用色空間(カラースペース)
CameraRawフィルターの「プレビュー・ヒストグラム・色域警告」はその画像のカラースペースに合わせて作業色空間が変わります。
*当たり前と思うかもしれませんが、これに関しては過去かなり混乱していました。
以前まではベースになるCameraRawが最後に閉じた時のワークフローでしたし、それがPSのバージョンアップで、ベースのワークフローに関係なく、PSで開いている画像のカラースペースにも関係なく、「ProPhotoRGB」固定の時もありました。これらがPSのバージョンアップのたびに繰り返されていたので、現在がもっともシンプルではありますが、PSのバージョンアップでは念の為確認することが必要かも知れません。
🔴プリントやCMYKの作業用色空間で処理する
ワークフローでカラースペースを目的の「CMYK」にすると、校正モードとしておおよそではありますが、印刷で出る雰囲気を確認することが出来ます。
通常の「色域警告」同様にCMYKでは再現できない範囲を表示してくれます。
◎プリント校正として作業する
CMYK同様に、プロファイルがあればプリント用のプロファイルで色再現を確認しながら調整を行えます。
理屈で言えば、そのプリンタープロファイル(広色域)のままで、そのままPhotoshopに展開してAdobeRGBなどに変換します。もとよりそのプリンター、インク、用紙の組み合わせで再現される「プロファイル」なので、あまりお勧め出来るやり方ではありませんが、そのプリント用としての画像であれば良いとも言えます。
🔴CMYKデータをCameraRawで再調整
Photoshop上では、CMYK画像は「CameraRawフィルター」は使えません。一度「RGB」に戻さなければ使用することが出来ません。
BridgeやPhotoshopから『CameraRaw』で調整することは可能です。ただしアラートにも書かれていますが、やはり画像データをRGBに変換します。
CMYKデータを「CameraRaw」で開くと、ワークフローは『CMYK』になっています。色数は少ないので、調整幅も劣化を考えると無理はしない方が良いですが、調整後はそのプロファイルのままPhotoshopへ展開します。
🔴「CameraRawフィルター」を動画編集で利用する
色やコントラスト、その他の色調縫製を行いたい「動画ファイル」をPhotoshopで開きます。
動画ファイルのレイヤーを「スマートオブジェクト」に変換し、「CameraRawフィルター」で目的の補正を行います。
以上です。これだけで簡単に動画ファイルの色調補正が出来ます。