Adobe Camera Raw

ホワイトバランスとカラーサンプラー

🔴ホワイトバランスについて

ホワイトバランツールは画像に対して、光源や環境・その他の問題で本来の色からズレた色温度や色被りを修正して「グレー(黒〜白)」の色を本来のニュートラルな色に戻すことで、他の色も適正となるであろうとする補正ツールになります。

これは、写真の教本やWEB、動画でも基本の所作の部分で同様の説明が数多く巷に溢れているのですが、本当にそうでしょうか?根本的な部分の説明が不足しているのでこちらで書いてみます。

また、CameraRawのホワイトバランスツールは、他の現像ソフト(Lightroom含む)にはない機能があるので、そちらも合わせて紹介します。

その前に、多少長くなりますが、ホワイトバランス補正について今一度考えましょう。

ホワイトバランスを補正する説明で一番多いのが、風景や人物の画像を例にしながら「画像の中の本来は白(グレー)であるべき場所を探して、専用のスポイトツールを使いその場所をクリックしてニュートラルな色に戻します」と言う説明です。

説明自体はその通りで正しいです。しかし、そう説明しながらも動画なんかではカチカチといろんな場所をクリックして、一番「それらしい」ところで「この辺りかな?後は微調整しましょう」と言う説明が多いです。これは全く意味がありませんし、正確性を欠きます。

ホワイトバランス補正は、白(グレー)のRGBがバラバラで「ニュートラルではない色」の部分をスポイトでクリックすることで、その部分の色のRGB値を揃えます。その結果、その部分の色が本来のニュートラルな色に変わります。

この時のRGB値の補正量が画像全体に影響します。ざっくり言えば、赤っぽい白(グレー)の地点をニュートラルにするために青味を足します。その結果、画像全体は青っぽくなります。色かぶりも同様に動きます。

ここで問題なのは、スポイトを使用する部分です。白っぽい物(もしくはグレー)なら何でも良いと言う訳ではありません。

スポイトによる手動でホワイトバランスを補正するには、『蛍光増白剤、合成繊維、光沢など混ざり物のないニュートラルなグレー』の物を使用することが基本です。

専用のツールで言えば、カラーチェッカーや銀一グレーなどの商品ですが、風景や人物などスナップを含めて一般的な写真の場合は当然ながら専用のツールなどあるはずもなく仕方がないこともあります。もちろん専用のツールであっても経年劣化しますし、100%ニュートラルな状態のものは少ないので、実際にはそれらを使用しても微調整は必要です。

しかし、見た目で「白」に見えると言っても服や壁なども実際には薄らとクリーム色だったり、僅かに青みがあったりします。完全にニュートラルな色でない物をスポイトクリックで「白」にしてしまう行為は間違っていますし、おすすめ出来ません。

ほとんどの現像ソフトにあるホワイトバランス補正のスポイトツールですが、通常は白もしくはグレーにしたい場所をクリックすることでそのポイントの色(RGB値)を揃える行為を行います。

他のソフトも基本的には同じですが、CameraRawのホワイトバランス補正で動くスライダーは、「色温度」と「色かぶり」の2本のスライダーです。

スポイトが上手くいかず、結局は見た目(好み)で補正するのであれば、最初から2本のスライダーを動かしても時間的には僅かな差です。

色温度は「赤く」も「青く」もないところ。

色かぶりは、「グリーン」でも「マゼンタ」でもないところ。

がその画像でニュートラルな補正値になります。

ですが、現実にはカメラ側や光の問題でそれだけでは見た目にしっくりこないことも多いです。

それは「色温度」と「色かぶり」の補正の行い方に原因があります。

「色温度」と「色かぶり」は、例えるなら上図のように縦軸と横軸の補正でフィルター的に色を被せるような調整を行います。

ホワイトバランスを補正したのに色がしっくりこず、僅かに青みが足りないと言うことがあっても、色温度で青みを足すと言うことではないのです。これは、カメラ内での微調整同様に「色温度」と「色かぶり」を調整してもその間の青緑の方向には動かないからです。

カメラ内の微調整やDPP4なども色温度の微調整には、単純な「緑-紫」ではなく、色相環による微調整が行います。

CameraRawの場合は、「色かぶり」補正で補いきれない場合は、「カラーグレーディング」の『グローバル』補正を微調整として使用することですっきりとしたホワイトバランス補正を行うことが出来ます。

🔴マニュアルホワイトバランス(スポイト)の使い方(Lightroomにはない機能があります)

CameraRawのマニュアルホワイトバランス補正ツールには、Lightroom含めて他のRAW現像ソフトにはない機能があります。

通常のワンクリックWB補正と比べると一目瞭然です。

一見、同じような色(色からグレー)でも正確には、ポイントごとにRGBのズレはあります。通常のワンクリックWB補正では、どこでクリックしても同色全体としてのバラつきは必ずしも統一されません。

CameraRawのマニュアルホワイトバランスのスポイト機能は、「ドラッグ&ドロップ」で補正したいエリアを選択して、その中の平均値を出すようにWB補正が行えます。

*白に見えても素材によっては、スポットでも平均でも必ずしも上手くホワイトバランスは取れません。上の画像もまだ少し緑かぶりですね。しかし、あちこちクリックするよりは「色温度」的には平均値で比較的良い値を出してくれます。

CameraRawユーザーで使用したことがなかった方は是非使ってみて下さい。

当然100%完璧にバラつきがなくなるわけではありませんが、この機能の方が格段に安定感が増します。


🔴カラーサンプラーツールについて

CameraRawにはカラーサンプラーツールがあります。(Lightroomにはありません。)

カラーサンプラーは昔からある機能ですが、CameraRawダイアログの右下にある「サンプラーオーバーレイを切り替え(S)」でプレビュー上部にツールが出ます。

プレビュー上で、常にRGB表示を確認しておきたい場所を最大9つの地点で表示出来ます。

カラーサンプラーの使用目的はユーザーごとに変わると思いますが、もっとも利用される使い方としては以下の2点が多いと思います。

◎「ハイライト・シャドー」の白飛び、黒潰れの確認およびハイライト・シャドー部の階調の確認。

◎他の画像との色(RGB)合わせのための色数値の確認

通常のスナップなどでも、やはり白飛び・黒潰れは意識したいものです。

イメージ優先の考え方では、気にする必要はないと言う意見も多いですが、印刷物にせよデバイス表示にせよ、表現としての考え方では画像の階調を意識することは重要で、アウトプットの特性に合わせた最大限の階調を出すためにはRGBの数値は意識したほうが良いです。

♦️カラーサンプラーツールの使い方

①サンプラーオーバーレイを表示で、プレビューの上部にカラーサンプラーツールBOXが出ます。

②ズームアイコンやハンドツールがカラーサンプラー用のスポイトツールに変わりますので、プレビュー上で表示したい色の地点をクリックします。クリックした順番に番号つきのポイントマークが表示されます。ポイントマークの側ではスポイトアイコンが、移動アイコンに変わりクリックしながらそのポイントを移動する事が出来ます。*ポイントは最大9つで、残念ながらポイントマークの非表示はありません。

③ポイントされた地点のRGBを常に表示します。*通常はプレビュー上にポインタがある時に、ヒストグラム上にその地点のRGB値を表示します。カラーサンプラーは調整を行う上で常に処理によってその地点のRGB値の変化を確認出来ます。

④✖︎マークをクリックすると、カラーサンプラーBOXを消すことができますが、ポイントは消去されません。再び①のツールをクリックすると表示されます。

⑤チェックしたポイントを全て削除します。ポイントは再度選択し直しになります。

⑥ヒストグラム上に表示されるRGB値と同様に、カラーサンプラーで表示されるポイントのRGB値は、ワークフローオプションで作業色空間として指定されている「カラースペース」に依存します。*同じカラー間であればPhotoshop上のRGB値とほぼ同様の数値です。

♦️ワークフローオプションで作業色空間をCMYKにしている場合は、ヒストグラム上のCMYK値の表示と同様にカラーサンプラーの表示もCMYK値で表示されます。

ポイントマークが非表示に出来ないのでその部分は使いにくいかも知れませんんが、印刷やデバイスなどアウトプット先での白飛び・黒潰れ、階調の破綻や色だしなど厳密な調整を行いたい時には便利なツールです。

昨今はヒストグラムや数値を意識しないユーザーが増えていますが、デジタル画像は情報数値です。数値を気にせず「見た目と雰囲気」だけでの処理はカラーマネジメント同様に問題が出る場合もあるので、大事な部分で確認出来るように機能を理解しておくと良いですね。