カラーマネジメントとは

5.デジタルの色、CIEとICCについて

カラーマネジメントの基礎部分で、カメラマンなら聞いた事がある「ICC」や「CIE」など、色に関する基準について知っておいた方が良いこともいくつかあります。

最低限ではありますが、代表的な部分をごく簡単にまとめました。興味のある方はご覧くださいませ。

♦️カラーマネジメントシステムで使用する色とは♦️

デジタル画像、RAWデータの話題でも昔からよく耳にする言葉が「デジタルは本当の色がない」ですが、これは「見えている色と違う」と言う意味でしょうか?しかし、この言葉はそのままでは誤解を生んでしまってます。

デジタルだからこそ「基準」になる色が必要で、その色を正しく制御・運用するのがカラーマネジメントになります。

CIEによって1931年のグローバル会議で「CIE XYZ三刺激システムやYxyのよる表し方」などプログラム内で基準となる色が定義・制定されました。これにICCが準拠し標準として制定した範囲やデバイス・用紙などの色再現域を基準にしたプロファイルと合わせて色を固定してPC間、PC-デバイス間で色の共通認識を持ち情報値の連携をとります。

♦️CIEについて♦️

🔴CIEについて

CIE(Commission Internationale de I’éclairage 国際照明委員会)

光、照明、色、色空間などを規定する国際標準化団体。

CIEは、技術、科学、文化の非営利団体であり、その目的な次のものです。

国際照明委員会(CIE)は、照明の芸術と科学に関するあらゆる問題について、加盟国間の国際協力と情報交換を目的とした組織です。約40ヶ国の国際委員会が加盟しています。日本では「JLMA(一般社団法人 日本照明工業会)」がそれにあたります。

照明環境を改善するための知識の進歩と標準化の提供、強力な技術的・科学的・文化的基盤を持つ国際照明委員会は、自発的に加盟国にサービスを提供する独立した非営利組織です。

元々は、1900年に国際測光委員会(CIP)として設立されましたが、1913年にCIEとして再編されて以来、同委員会は光と照明と言う主題に関して最高の権威を代表するものとして認められる専門組織になりました。CIEは、国際度量衡委員会(CIPM)、国際標準化機構(ISO)、および国際電気標準会議(IEC)によって国際標準化団体として認められています。

CIEの目的は以下の通りです。

1. 光と照明の分野における科学、技術、芸術に関するあらゆる事項を議論し、国家間でこれらの分野の情報を交換するための国際フォーラムを提供する。

2. 光と照明の分野における計測の基本的な基準と手順の開発します。。

3. 光と照明の分野における国際および国内規格の開発における原則と手順の適用に関するガイダンスの提供します。

4. 光と照明の分野における科学、技術、芸術に関するあらゆる事項に関する規格、報告書、その他の出版物を作成し発行します。

5. 光と照明の分野における科学、技術、標準化、芸術に関連する事項に関する他の国際機関との連携および技術的交流を維持する。

CIEの業務は、7つの部門と約20の技術委員会によって行われています。これらの目標では、光と照明には、視覚・測光・測色などの基本的な主題が含まれており、紫外、可視および赤外のスペクトル領域にわたる自然放射線および人工放射線が含まれ、また、すべての用途をカバーする応用主題も含まれることに注意する事が重要です。さらに光と放射性の生成と制御の手段だけでなく、環境効果や美的効果を含む屋外と屋内の光についても研究・検証が行われ基準が刷新されています。

CIEのこれらの国際部門によって作成された規格と技術報告書は、世界中で受け入れられています。

この会議は4年ごとに開催され、部門と技術委員会の業務レビューと報告、将来の計画が常に行われています。CIEは、光と照明のあらゆる側面に関する権威として認識されています。その為、CIEは国際期間の中で重要な位置を占めています。


CIEの歴史:抜粋

1900年にパリ万国博覧会(I’Exposition Universelle de Pris)の開催にあたって開かれた国際ガス会議(Congrès International de Gaz)において、フランスガス工業会(Société Technique de L’Industrie de Gaz en France)の会長のTh. Vautier教授を進行のもと、白熱ガス灯の光の測定法についての国際的な意見の一致が望ましいとして決議案を提出します。「国際ガス工業会議」は照明用ガス・バーナーを正確に規定に規定する事で、ガスの生産者も消費者も共通の利益になると考え、白熱ガス・バーナーの測光を目的として「国際委員会」を設立します。本会議事務局はこの委員会の設立を取り進めるという議案が討論され、満場一致で可決。決議に従い即日事務局会議が招集され、国際測光委員会(CIP:Commission Internationale de Photometrie)の名前で設立されました。

第一回会議では、長期に渡るプログラムの取り決めがなされ、その一つに白熱ガス灯の測光について詳細は規定の樹立を行いました。

第二回会議では、平均球面光度の測定が討議され、ウルブリヒト球をこのために使用することが報告されました。また、光源の測光が電気工業界で初めて取り上げられました。

その後の第三回大会で、多数の実験研究からガスの真価を示すための試験は、光度ではなく、熱量の測定であるべきと勧告。

H. Stracheが提出した論文で、光源からの放射に視感度に従って重みをかけ、これを絶対単位で測定するとそれがその光源の光度の測定であると論じられました。さらに眼の平均感度曲線を定めるべきと主張。これは、1924年にCIEがVλ曲線を決定したことの前触れをさすものであります。

 

この頃から照明工学の発達は顕著になり、第3回大会後の1911年9月10〜16日にトリノで開かれた国際電気会議(International Electrical Congress)で照明委員会の問題が取り上げられ、イギリス照明学会を代表するLeon Gasterの提議により次の決議が全会一致で採決されました。

「本会議はロンドンの照明学会に基づき、照明方式の研究ならびに照明に関係ある諸問題の研究のため、国際測光委員会(CIP)を強化し、新たに国際委員会の設立を希望する」

これにより委員会の新しい定義の作成が、1911年に測光量および単位の組織化を研究するため任命された委員の手に委ねられました。

 

1913年ベルリンで上記の委員会は、Patersonを幹事として作業を進め、拡大して「Commission Internationale de I’éclairage(国際照明委員会)」となった委員会の定款案を策定し、国際測光委員会CIPの第4回大会が開催されるときには、この新しい国際委員会が議題に上がり、大会は終日この案の討論と改訂とに費やされました。

 この大会は非技術的で記録はありませんでしたが、フランス語の多数の複写があり、また最終的に協議成立した定款は、新委員会の第1回後の1923年Lyonsで印刷されましたが、制定策定日は1913年9月としました。採択された国際委員会の目的は次のように述べられました。

 「本委員会は、照明技術ならびにこれに関係ある化学に関するすべての問題を研究し、かつ適当な方法により照明の問題につき国際的協調を得るを目的とする」

引用・抜粋 「国際照明委員会50年史」より


CIE活動の歴史の中で、とくに重要な議題・決議が行われたのが、1931年9月にケンブリッジで開催されました。この会議では、色彩を観察したり測定したりする際の照明や観察の条件を明確にしたシステムの考案をするための初のグローバルな試みでした。

1931年のCIEシステムでは①標準観測者の定義(色の見え方)。②イルミナント(標準の光源)。③CIE XYZ三刺激値システム。④CIE Xyxによる表し方(色の空間と色度図)などが決められました。

その後もこのシステムには数多くの改良が加えられ、1964年には標準観測者の定義が改定されました。

1976年には、①知覚的にほぼ均等な色空間であるCIE LAB(L*a*b*表色系)およびCIE LUV(L:u*v*)の制定。②色の"近さ"の概念を数値(ΔE*)化した定義などが追加されました。その後の成果としてはΔE(ΔE2000)やデジタルカメラ用の再現域のワイド・ガモットsRGBの定義などが決められました。

*標準光源に関しては、長らく(現在の認知)D65に対し、印刷基準のCIE光源D50(5000K)は「補助標準光源」とされています。しかしこれは2022年に改定されています。『CIE光源D50』はグラフィック、アート、写真の分野で広く使用されていることから『標準光源』と定義されました。


🔴XYZ(xyz)表色系

カメラマンが扱う画像データ(デジタルイメージ)は、基本的にはRGBデータの運用です。現像ソフトも基本はRGBで処理をします。しかしカラーマネジメントの世界ではRGB表色系は必ずしも理想的ではありません。

各種デバイス「人間の眼、カメラ、スキャナ、モニター、プリンタ」などは、それぞれが少しずつ異なる範囲のRGBを持っています。つまりそのデバイスの数だけ三原色の色が存在すると言うことです。

「RGB表色系」が光を表す体系としてより優れていると考えられているかも知れませんが、それは決して十分ではなく、当然そのRGBの外側にも光が存在します。その為、CIEによって、RGB色空間を拡大することで問題を解決する全ての表色系の中核となる新しい三刺激値の表色系が考案されました。

R(赤)をX、G(緑)をY、B(青)をZとし、新しく架空の原色点を設定しRGBの三原色と区別するために、このXYZを「三刺激値」と呼びます。

つまり、もっとも信頼できる色空間はXYZと呼ばれるシステムに基づいています。カメラマンがCIE XYZ方式を直接扱うことはほぼないでしょうが、これは色彩の専門家にとっては必須の知識であり、例えばPCのプログラムの内部処理に活用されます。

XYZ表色系は、現在CIE標準表色系として各表色系の基礎となっています。

物理学者のt.ヤングが発見し、のちにH.ホルムホルツが拡充した光の三原則(RGB)の加法混色の原理に基づいて発展しました。

色度図を使いYxyの3つ値で表します。

 

Yが反射率で明度に対応し、xyが色度になります。

 

色度図に黒体の軌跡をプロットしたものが左図になります。

 

相関色度図で表してよい色の範囲は、JIS規格では、uv色度で黒体軌跡との距離が0.02以内と決められています。

XYZ表色系には、測色に際していくつかの諸条件を組み入れる工夫が加えられました。

・光源の種類(標準イルミナント)と関係付けること

・どのような眼(測色標準観測者)で見るか(等色関数)

・明るさ(測光量)をYで代表させ計算を単純化する(X,Zは明るさがないと考える)

と言うような内容です。

このような条件が記号や数字になっています。この時に波長の表示にλ(ラムダ)と言うギリシャ文字が使われます。

XYZによる表し方は、大文字は混合する3色それぞれの量を表示します。小文字のxyzは「色度」で、比率に置き換えた表し方で、x+y+z=1とします。

このとき、2つの数値が分かれば3つめはおのずと分かりますから、表記上ではxとyだけを使いzを省略します。これにより横軸にx、縦軸にyを使った上図のような『色度図』が出来上がります。

カラーマネジメントでもよく見かけるこの色度図(Yxy色空間)ですが、色を明度に依存しない2次元のグラフで描くために使用されます。可視スペクトルの各波長をxy色度座標に変換・プロットしていくと、スペクトル軌跡(単色光軌跡)として知られる馬蹄形の曲線になります。これがよく知られる「人間に見える色は全てこの曲線の内側にある」と言う図ですね。

馬蹄形に沿って移動するとニュートンの発見したスペクトル順の色相順で変化します。この馬蹄形曲線の両端を結んだ直線が、純紫奇跡と呼ばれます。この直線上に位置する色は、純粋な380nm(紫)の光と770nm(赤)の光を混ぜ合わせたもので、太陽のスペクトルには含まれません。

色度図は太陽光におけるスペクトルが波長に沿って周囲をかこみ(単色光奇跡)、そこに太陽光に含まれない赤紫領域(純紫奇跡)を加えて色相環が出来上がります。xyzがほぼ均等の位置に無彩色(白色点)があり、外側から内側に向かって彩度が低くなっていきます。Yは緑でしたが、明るさとして表す場合に物体色では「視感反射率」と呼び、Yの軸が白色点に立って、色立体が組み立てられます。xy色度図の色立体図を見かけることが少ないのは、Y軸の断面を見るとどこもが相似形をしているためにその必要が無いのです。

まとめるとXYZ表色系の多くはYxy(Y:視感反射率、xy:色度)で表示されます。色の三属性で言えば、Yが明度にxyが色相と彩度に相当します。

マンセル表色系やNSCもYxyの値で細かく規定されており、互換性が保たれています。

なお、XYZは2°視野で測定しますが、面積が大きい場合の測定は視野も大きくした方が好ましく、その場合は10°視野を用い、表記もX₁₀Y₁₀Z₁₀とします。*以下、標準観測者で詳細追記

🔴CIE LABについて

LAB色空間は比較的知覚的に均等で、赤-緑と青-黄のスケールにうまく対応しています。そのため印刷およびグラフィックアーツのような、反射性および透過性の製品を扱う多くの業界では、CIE LABが採用されています。例えばADOBE Photoshopは、計算処理を行うための内部的な色空間としてCIE LABを採用しています。白色点はD50になります。

XYZ表色系は一つ一つの色を表すには優れた体系ですが、複数の色の違いを表すには適していません。人間の眼には物理的な色空間が均一に見えないからです。例えばスペクトルでは赤の範囲が広く、黄色の範囲は狭くなり、黄緑と緑は再び広くなります。

そこで、色度図の上で2点間の距離が眼で見た感覚差とほぼ比例するような工夫がされました。つまりxy色度図を変形させた均等色空間:UCS色度図(uniform chromaticity scale diagram)の開発です。

これにより色違いの程度を数値で表示出来るようになり、染色、印刷、塗装などの産業実務で多様されることになりました。

この不一致性の調査は1940年代に行われ、その後も開発が重ねられて1964年にマックアダムの研究をベースとするU*V*W*色空間をCIEが採用、1976年に「L*u*v*表色系(CIE LUV:シーリューヴ)の制定に至ります。

一方、マンセル色空間は比較的に心理的等歩度性があり、これに近似させる研究をアダムスとニッカーソンが行っていました。それと当時、広く採用されていたハンガー方式をベースに、同じ1976年代に「L*a*b*表色系(CIE LAB:シーラブ)が制定されました。

一般的にL*a*b*の色空間は中心軸にL*(マンセル明度の10倍を考えます)が立ち、a*は+(プラス)方向が赤、ー(マイナス)方向が緑、b*は+方向が黄、ー方向が青の球形をしています。

🔴標準観測者について

色の測定のためには当然ですが、測定の基準が必要になります。まず初めに観測者の定義ですが、「正常な観測者」の定義を決めるため、被験者にカラーマッチングの装置を覗き込んでもらいながらデータを取得します。

1931年の標準観測者の定義は人の目を頂点として2°の視野に基づいており、これは今も通常の標準として用いられています。

1964年になって、2°よりも広い視野の測定に矛盾が指摘された為にデータは再調査されました。とくにスペクトルの青から緑の領域が問題になりました。人間の目の網膜の中心部は中心窩と呼ばれていますが、この部分は錐体の数が桿体の数より多い領域です。と言うことは、視野が4°を超えると錐体があまり集中していない領域を含めた部分で色を見ていることになります。*実際にはその差は非常に微妙なもので、識別できるのは稀なことです。

しかし、測定技術の進化で微細な相違を測定することが可能になったため、CIEは1964年の会合で、4°よりも広い視野で観測する際に用いる『10°視野』に基づく補助標準観測者を追加しました。現在では、全てのCIEカラー値の指定に、測定が1931年の2°視野の標準観測者と1964年の10°視野の補助観測者を区別するため、「X₁₀Y₁₀Z₁₀」と表記します。とくに指定がない場合には2°視野の観測者が適用されます。

🔴等色実験(カラーマッチングの実験)

人間の目で認識できる色は個人差がありますが、まずは標準的な人間の基準を決める必要があります。それらを数値化するための実験を等色実験と言われますが、以下のような図の環境で視覚の三属性を検証します。

等色実験とは、被験者が丸い穴の部分から見える上下の色が同じに見えるかと言う実験で、片方の「目標の色(単色光:スペクトル光)に対して、もう片方のRGBそれぞれの光の強さを調節して、目標の色と同じに見えるところを探していきます。多くの被験者でこれを行うのは現実的には難しい部分もありますが、出来るだけ多くの国、人種で行い平均値をとります。

このRGBの混合割合で、、上下2色の一致不一致を測定して、その結果を等色関数と言う関数にまとめていきます。

🔴ΔE、色差について

CIEのLABやLUVのような比較的知覚的に均等な色空間を用いて、2つの色がお互いにどれくらい近いかを計算することが出来ます。この2つの色の間の数値を「色差」、その差を表示するときに「ΔE(デルタ・イー)」と表示されます。

また、この数値を計算するための方式を色差式と言います。LABかLUV座標で色の位置を決めて、それら2点間の距離が色差になります。この2色の色差は「ΔEab」と呼ばれる数量値で測ることが出来ます。その計算の公式は以下になります。

ΔE*ab = [(ΔL*)² + (Δa*)² + (Δb*)²] 1/2

色差はΔE*abで表され、2色間の距離を数値で示します。色差の表示はおよそ次のような程度が目安になります。

ΔE*ab =0.3 :人間の眼にはほぼ同一として認識できる精度

ΔE*ab =0.5 :人間の眼にはほとんど差はかんじられず、よく見ると僅かに違うかな思える程度

ΔE*ab =1.0 :ほんの少しの違いを感じる程度。日常的には同じ色と扱われる場合が多い。

ΔE*ab =2.0 :2色を隣接させれば違いは明らかである。距離を離して見た場合は違いがわかりにくい。

🔴CIE標準光源(イルミナント)

標準光源とは、CIEが測色用に用いるために相対分光分布が規定された光のことです。

一般に耳にするのは以下の種類ですね。

・標準光源A:色温度2,856.6°Kの白熱灯(タングステン電球)

・標準光源D65:相関色温度6504°Kの昼光

・標準光源D50:相関色温度5003°Kの昼光

その他、標準光源Dt、D55、D75、Bなどが定められています。

カメラマンの場合は、よく見聞きするのが、日本印刷学会の規定だと思います。

印刷物色評価用標準光源として以下のものが定められています。

・相関色温度:D50、平均演色性評価数:Ra95以上

・印刷物の色評価にあたっては、色評価用蛍光灯(現在はLED)として演色AAA昼光色(5000K)が望ましい

D50≒5000Kは、印刷評価用として定められ、そのためモニターのキャリブレーション目標値もそれに合わせて5000Kとされています。

評価光源としては、それ以外は一般的には6500K≒D65が有名ですよね。sRGBなどのプロファイルの白色点にも使われています。なのでモニターの色も基準は6500Kなどとも言われます。

プリント出力などの際にも環境光を含めて6500Kの環境で説明されることもあるようですが、プリント用紙がそれに近い青っぽいものを使用するかも関わります。

CIEについて補足。

1966年に標準光源のA,B,Cに加えてD65を追加しました。さらにD65以外の条件での仕様としてD75D55などの分光分布を与えた規定も追加されます。

 

CIEイルミナント「D50」は業界では今でも「補助イルミナント」と言われていますが、2022年のレポートでは、現在もD50はグラフィック、アート、写真の分野で広く使用されているため、CIE標準イルミナントに改定されております。このため、CIE標準光源AおよびD65に加えて、CIE光源D50も新しい標準光源として定義されています。


♦️ICCについて♦️

🔴ICCについて

ICC(International Color Consortium :インターナショナル・カラー・コンソーシアム)*プロファイルの標準化を規定する委員会

ICCに準拠したカラーマネジメントシステムでは装置依存色からICCプロファイルを使い、装置非依存色で管理されるPCS(Profile Connection Space:プロファイル接続空間)に色空間の変更を行ます。これによりデバイスやデータ間の色を基準値をベースに互いに連携をとります。

1993年に設立された民間の標準化団体で、オープンでベンダーに依存しないクロスプラットフォームのカラーマネジメントアーキテクチャーの標準化を目指しています。

設立当初は、[ Adobe System inc., Agfa-Gevert N.V., Apple Computer Inc., Eastman Kodak Company, Microsoft Corporation, SILICON Grapfics Inc., Sun Microsystems Inc., Taligent ]の8社でスタートしました。その後2006年には米国27社、アジア24社、ヨーロッパ15社のメンバー構成になり、現在はさらに増えています。

ICCで開発している標準は『ICC Profile Format』と呼ばています。

現在も年に数回開催されるICC会合で常に審議され続けていて、2023年4月にはロンドンのウェストミンスター大学で会合を開催しました。

・「画質と画像の美しさのギャップを埋める」Sopfie Triantapfilidou ウェストミンスター大学

・「カラーマネジメントのための色のネーミング 」Dimitris Mylonas ノースイースタン大学

・「等色関数と個人差」Andrew Stockman、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン

などいくつかの講演、発表がありました。

♦️ ICCプロファイル定義 ♦️
カラーマネジメントにおいてICCの公表した標準に従い、色に関わる入出力機器や色空間を特徴付ける一連のデータとしてのICCフォーマットは正確に定義されているが、アルゴリズムや処理の詳細は定義していない。

色を定義する規格は2種類あります。装置やデータに依存しないデジタルでの基準となる『デバイスインディペンデントカラー』と、各種デバイスやデータとして扱われるICCで定義されたものを準拠した色空間『デバイスディペンデントカラー』になります。

◎デバイスディペンデントカラー
(Device Dependent Color / 装置依存色)
機器やデータドキュメントなどで使用される色空間 ・RGBやCMYKなど
◎デバイスインディペンデントカラー
(Device Independent Color / 装置非依存色)

器やデータに依存しない基準値
・CIE L*やCIE XYZなど

ICCプロファイルの種類

デジタルカメラやスキャナなどの入力プロファイル、モニターのモニタープロファイル、プリンターや印刷機の出力プロファイル、sRGBやAdobeRGBなどの流通する基準プロファイル、さらにユーザーが任意で補正情報を付加するアプストラクト・プロファイル、複数のデバイスプロファイルとアプストラクトプロファイルを組み合わせて一つにしたデバイスリンク・プロファイルなどがあります。

PCS(Profile Connection Space)について

あるデバイスの色空間で定義されている色を別の色空間に変換する際に、変換元の色をいったん絶対的色空間に変換し、その後、変換先の色空間の色に変換します。その際に参照する「変換元/変換先」の色空間について記述されたプロファイルであるため、絶対的色空間のことを「プロファイルを繋ぐ空間=PCS」と呼びます。

補足:カスタマイズで作成されたモニタープロファイルは、白色点の位置(例:6500k)に関わらず、プロフィル自体の表向きの白色点はD50になります。これはICCのの取り決めです。


♦️マンセル表色系(表記法)ついて♦️

🔴マンセル表色系(表記法)について

アメリカで美術教師をしていたA.H.マンセル(1858-1918)は、全ての物体の色を表すことのできる「色の三属性」すなわち色相(Hue : 色の違い)、明度(Value : 明るさの度合い)、彩度(Chroma : 鮮やかさの度合い)による表記法「A Color Notation」を1905年に発表し、1915年に試作の色票集を、1929年に「Munsell Book of Color」初版を刊行しました。

その後1943年にXYZと関係づける修正を行なって今日に至ります。日本ではJISに色の表示方法として採用されており、これに準拠した「標準色票」が広く普及しています。

色相はR(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)の5原色にYR(黄赤)、GY(緑黄)、BG(青緑)、PB(紫青)、RP(赤紫)の5中間色相を挿入した10基本色相を設定、おのおのを更に10分割して色相環が合計100に尺度化され時計回りに位置付けられます。

輪の中心に、垂直の柱を描き、最暗部を0(黒)、最上部を10(白)とし、その間には無彩色の灰色が来るように配置しました。

彩度は無彩色を0とし、色が鮮やかになるに従い高い数字を付し、純度は10〜15あたりに分布します。純色の彩度が一定しないのは、色相によって顔料の純度が異なることによります。

これがマンセルバリュー(明度)のスケールになります。

中央の輪から外側に広がる距離は知覚的に均等な段階に分けられ、中央が0で始まるように決められています。この距離は特定の色相における

クロマ(彩度)を表します。

 

マンセルの表記法は、有彩色は色相→明度→彩度の順に表ます。明度と彩度は/で区分けします。

例えば5R5/15は色相がRの真ん中あたり、明度が中程度の明るさ、彩度が極めて高い、つまり赤の純色となります。

ピンクなら「5R8/4」は色相が赤で、非常に明るく、ほどほどの鮮やかな色を表します。つまりピンクです

無彩色はN(Neutralの略)に明度数字を付して、有彩色と区別します。例えば、N8はかなり明るい段階の無彩色となります。絵具で表せる範囲はほぼN1からN9.5までの幅です。

なお三属性の用語は、マンセル以外の体系では、色相(Hue)はおなじですが、明度ではLightness(明度)、Darkness(暗度)、彩度ではSaturation(飽和度)を用いる場合があります。