カラーマネジメントとは
昨今は写真をデバイスで楽しむ方の方が多く、プリントをする方が少なくなって来ています。カラーマネジメントと言えば、写真業界ではアマチュアを含めて圧倒的に多いのが、モニターのキャリブレーションとプリント時の設定、そしてプリントされた写真との比較です。
さらに、現在はiPhone・iPadを中心にスマホやタブレットなどのデバイスとの比較で、ソフトウエアやアプリの設定の話題などが増えていますよね。しかし、それらはカラーマネジメントの一部です。
なのでここでは、カラーマネジメントの仕組みと話題に上がりやすいテーマについての再確認をしてみます。さらに今後とくに重要になってくるソフトウエアのカラーマネジメントについてなど、前のページの説明より少し深くいくつかのポイントを再確認しましょう。
「1.カラーマネジメントに必要なこと」のページと重複することも多くありますが、少しでも情報を増やして書いて見ます。
まず今一度、当たり前ですがカラーマネジメントに必要な機材と条件を再確認しましょう。
◎画像データ
プロファイルを入れることが絶対です。
◎PC、デバイスなど
これは無いと先に進まないので当然ですが、大事なのはOSがカラーマネジメントに対応しているのか、です。
◎モニター
パネルはIPSで、出来れば広色域モニター。可能であれば正確な表示と仕組みを採用しているメーカーのカラーマネジメント(ハードキャリブレーション)モニターがいいですが、通常のモニター、ノートタイプの場合はソフトキャリブレーションで対応。
◎キャリブレーション用の測色機(センサー)
一般的なフィルター式のセンサーで良いですが、可能であれは光学式のセンサー(i1 Proシリーズか、ColorChecker Studio)
◎ブラウザ、ソフトウエア、アプリ
画像を表示するツール、編集するツールなどいろいろありますが、表示するツールがしっかりとカラーマネジメントに対応しているのか、それに関わる設定があるのかが重要です。
対応している場合もカラーマネジメントに関わる環境設定の部分を正しく設定しましょう。*校正(シミュレーション)モードがあると尚可
◎プリンター
これはユーザーによります。綺麗にプリントしたいなら写真用。特色などのカラーインク、モノクロインクの多いもの。
*カラーマネジメントを行うには、プリンターとプリント用紙の組み合わせによる「専用のプロファイル」が必要になります。プリンターによっては、用紙メーカーからダウンロードでも入手できます。
専用プロファイルがなければ「分光式のセンサー、ソフトウエア」でオリジナルの「カスタムプロファイル」の作成を行い運用します。
◎環境光
モニターを置いて画像処理をする部屋の環境光は一定に整える必要があります。
♦️CMS:カラーマネジメントシステムとは♦️
モニターや出力(プリント)されたものが何もしなくても色が合うと言うことはほとんどありません。それぞれのデバイス間の色は『カラーマネジメント』を実施しなければ合わないのが普通です。
色が合わない原因は、そもそも個々のデバイスにそれぞれの要因で「独自の色再現域(幅)」があるからで、その色の違いをICCプロファイルという各種デバイスの色情報を持った特性ファイルを用いて、それぞれのデバイス間の色を出来るだけ合わせる作業を行います。
また、この時に何を重視して合わせるのかを「レンダリングインテント」で選択します。
CMS(カラーマネジメントシステム)とは、デジタル上で運用する為に定義された色情報値を基準に、PC間(PC⇄PC、PC⇄iPadなど)や各種デバイスの色情報を持ったICCプロファイルを用いて異なるデバイス間の色をオリジナルに近い色に合わせこむ仕組みのことを言います。
遥か昔、まだモニターがブラウン管だった時代にPCで色を扱い始めた頃は、色の基準が制定されていなかったために表示される色はメーカーごとに好き勝手な色を持っていました。当然ながらそれではユーザー同士、何よりPC間での連携は全く取れません。
とは言え基準があっても、各々のモニターは現在もメーカー、部材、仕組み、さらに経年劣化など様々な要因で購入したそのままでは意思疎通が出来ないほど見た目が違います。
デジタルは情報数値です。「デジタルには正しい色が無い」と言うセリフもよく耳にしますが、それが「正しいか」どうかはともかく、PC間(プログラム上)で互いに「色」を認識し合うためにはいわゆる情報数値としての共通言語が必要です。画像データもそうですが、ユーザー側の色の好みやメーカーカラーの良し悪しではなく、基準となる情報数値を正確に伝え理解し合えているかどうか、その為の「設定が正しくプログラムされ操作されているかどうか」がカラーマネジメントのキモになります。
その為に、まずは互いの色の連携を取る必要がありPC間で色の認識を取るために、1931年の9月にCIE(Commission Inter-nationale de I'Eclairage 国際照明委員会)のグローバル会議で「CIE XYZ三刺激システムやYxyのよる表し方」などプログラム内で基準となる色が定義・制定されました。
さらにICC(International Color Consortium :プロファイルの標準化を規定する委員会)で準拠・制定されたICCプロファイルを使い、PC-デバイス間で色の連携をとります。
「基準となるデジタル情報値」を扱う各種デバイスですが、「記録するもの」「表示するもの」「出力するもの」とあり、それぞれが物質である為、そのデバイスによって色を再現する方式や色材が違うことから固有の色表現をしています。当然そのままでは色は合わないので、それぞれにある固有の色情報を持ったICCプロファイルを利用して基準との色合わせを行います。(ガモットマッピング)
そのプロファイルと基準値を繋ぎ変換するものを『PCS(Profile Connection Space)』と言い、これを利用した仕組みを『カラーマネジメントシステム』と呼びます。
*この辺りの規格やPCS・その他については、「5.デジタルの色、CIEとICCについて」で補足しておきます。
上図の左側はカラーマネジメントでよく見る図ですが、この図ですでに難しいと感じる方も多いようです。こちらはカラーマネジメントシステムの大枠の仕組みを図にしているだけですね。
しかし、実際はPC・デバイス間で『デジタル数値の正確な運用』だけではなく右の図のように、そこに関わる人たちで色の連携が取れるかどうかが重要になってきます。色が合っているとかいないとかは最終的には関わる人の視覚的要因が主になっていますよね。どこまで手数を踏んで追い込んで、数値とデバイスの連携に納得するのか、妥協するのかが大事になります。
しっかりとカラーマネジメントしているのに、どうしても色が合わない!と言う現場は多いですが、最初から最後まで正しく作業しているのに合わないとはどう言う事でしょうか?
作業に手を抜いていたり、予算の都合でデバイス側に無理があったりと100%色合わせを追い込める環境ばかりではありません。もちろん前提は「やるべきことをしっかりとやっている」です。しかし残念ながら偏った知識や設備投資になっているのにその自覚がない場合も多いです。
*ここで再認識してほしいポイント
PC間の連携は基準値があるのでカラーマネジメントの設定を間違わず、プログラム・プロファイル運用が正確に行われていれば本来は正しく連携が取れています。
ですが、実際には先にも触れたようにモニターやプリンター、紙、インクなどは『物体』です。仮に専用のICCプロファイルを使用して色情報数値の補正・連携が正しく取れていたとしても、メーカーカラーなどを含めて、それらデバイス・出力側の問題や環境の問題で数値通りの色が100%正確に出ることはあり得ません。この単純な理解が抜けていると感じることが多々あります。
昨今はiPadやスマホ、タブレットなどデバイスの需要が圧倒的に増えています。
こちらはデバイス側でキャリブレーションすることが出来ません。あくまでデバイス自体の色味で表示です。経年劣化も考えられます。
なので、画像データやアプリの連携など、システム上で情報数値の連携は取れていたとしても、必ずしも正確な色表示にはなっていない場合もあります。
視覚的にも色を正しく運用することは難しいのが現状です。
デバイス側の「何が限界なのか」「どこまで追い込めるのか」を正しく把握し、それでも結局のところは妥協点になります。仕事も同様ですが、人が行う行動も妥協点の幅で良し悪しが決まります。結果的には何をどこまで理解して努力するのか?がキモになりますね。
残念ながら、カラーマネジメントに関しては情報数値を連携し合う各種デバイス、ソフトウエアなど設計段階から間違いがあったり、必ずしも根っこの部分で正しく連携を取れていない場合もあります。その状態ではユーザー側がどんなに頑張っても正しい色の運用など出来ないのが、これも現状です。
♦️データ運用の流れからカラーマネジメントを考える♦️
*プロのカメラマン(写真)向けとして書いています。
🔴データの色の連携
カメラで撮影した画像の色は、そのカメラ固有の色域とカメラ内で指定したカラースペースで色が決まります。
前提として、カメラはスタート地点になる「光」を取り込む『入力デバイス』ですが、レンズを通して入った光をまずはRAWデータとして情報数値化します。
この際によく誤解されますが、RAWデータはすべての光を受け取ってはいません。光は確かにレンズを通りセンサーに届きますが、カメラごとにデバイスとしての部材性能にはそれぞれ違いがあります。当然受け取るCCD、CMOSやその他の影響で、実際には色情報として保持できる範囲がカメラごとに違います。
RAWデータは、メーカー各社、カメラごとに「取り込めるだけの輝度・色情報をまとめたデータ」になります。
カメラ内で「JPEGやTIFF」として記録する場合は、カメラ固有の色保存(RAW)から指定されたカラースペース内の色で画像として作られます。カメラ内の補完処理はおそらく「知覚的」になります。
次に、PCに画像を取り込み、写真ブラウザで表示・閲覧したり、画像処理を行います。
データが持つ色を正確に表示できるように、モニターはキャリブレーションを行い、デジタルの本来の色を正確に表示できるようにします。
モニターの色や明るさについては、目的やその他一般的な基準に従って行うようにします。
印刷業界であれば、「カメラマン〜デザイナー〜印刷所」までAdobeRGB画像の運用、キャリブレーションの目標値は「5000k、80~100cd、ガンマ2.2」などの基準があります。
WEBであれば、従来までは「sRGB、6500K、100~120cd、ガンマ2.2」でしたが、昨今のデバイス対応では、「DisplayP3、6800K前後、明るさは120cd~」と言う感じだと思います。しかし、メーカーの主張とデバイスの数、ユーザー数、キャリブレーション非対応、さらに自動補正など実際には基準も若干あいまいな状態です。
モニターごとの色再現は、そもそものパネル・発光・その他部材の要因、コントラスト比、LUTなどの仕組みや要因など様々な理由で最初から違いがあり、キャリブレーションしても全て同じになるわけではありません。
なので、結論としては「モニターはどんな物でもキャリブレーションすれば大丈夫」と言うことではありません。そもそもハードキャリブレーションタイプとソフトキャリブレーションタイプは仕組みが大きく違い、全く同じではありません。RGBを正確に扱うことが必要な場合はカラーマネジメントモニター(ハードキャリブレーションタイプ)を使うことが必須です。
もう一つ大事なことがあります。意外に知られていませんが、キャリブレーションはセンサーの性能にかなり依存します。モニター同様にそれぞれ性能、特徴がありますので、理解した上で使うようにします。
キャリブレーションやセンサーについては「4.モニターのキャリブレーションと測色センサーについて」をご覧くださいませ。
画像の色は最終目的に合わせてプロファイルの運用を行います。モニターの色域、目的のカラースペース、それに合わせたソフトウエアのカラー設定。それらが正しくないと見えている状態や処理の仕上がりで画像の階調を失ったり、損なう結果になります。
*上の画像の赤色の四角の中には「ABCD」の文字が書かれています。AdobeRGBモニターでは全ての文字が見えます。MacのモニタやデバイスではAの文字がかなり薄くなり、Bも少し薄くなります。sRGBのモニターでは、Dの文字が見えますが、それ以外は赤く潰れています。今見ているモニターは何なのか再認識してみましょう。
画像処理ソフトはモニタープロファイルを参照して適切な色を表示します。ソフト上では目的の色を正確に表示させる為にカラー設定や作業色空間のプロファイル設定が重要になります。
Photoshopのカラー設定は、デフォルトでは「一般用-日本2」のsRGBになっていますが、画像を開く際のプロファイルの違いなどのアラートにチェックが入っていません。場合によっては、例えば展開する画像プロファイルがAdobeRGBであっても気が付かずsRGBのつもりで作業してしまい、AdobeRGB画像として処理出来ないことになります。
目的に合わせた正しいプロファイルで色を正確に見て作業する為にもソフトウエアの色に関する環境設定、カラー設定、作業色空間は必ず確認するようにしましょう。
カラースペースによって色の再現(色座標点)は違います。
カラースペースが同じでも「画像の色」には、メーカーのカラーとさらに提供する「スタンダード」など各種アレンジした色があります。
どのメーカーの色が正しいとかではなく、人間の眼と「同じ見た目」の色に追い込む場合は『現物』を確認しながら色調整で追い込む以外に方法はありません。またメーカーから用意されている「忠実」や「ニュートラル」などが比較的見た目に近い設定になっています。
プリント出力を行う場合、対応している各種ソフトウエアのプリントダイアログでプリンター、用紙、用紙プロファイルなどの設定を行います。
モニターで見えている画像の色は関係なくて、それなりに遜色なく綺麗にプリント出来れば良いのであれば、カラー設定の項目を「プリンターによって管理」に設定します。こちらはカラーマネジメントは行わずメーカーによる色変換が行われます。
画像の色を出来るだけ忠実に再現したいのであれば、Photoshopの場合は、カラー設定から「Photoshopによるカラー管理」を選択します。さらにプリンターに合わせた用紙プロファイルの設定、レンダリングインテントの「知覚・相対」の選択、黒点の補正などを行い出力します。
画像の色が出力する用紙の色再現域よりもはるかに広い(高彩度)場合は、校正モードや色域警告を見ながら色調補正する方が良い場合もあります。
*しかし、印刷もプリントもその「紙の種類」や「インクの種類」、「印刷の仕組み」など様々の要因で実際に見える色(再現できる色)には大きく差があります。
「鮮やかな緑色や赤系の色が、印刷すると出ない」と言う話もよく聞きますが、もとより「印刷・プリントの再現域の問題で出ない色」は出ないんです。
シャドー部の再現も同様で、アート紙やマット紙、印刷でもその仕組み上で出ない色(黒の締まりと再現)はあります。デバイス表示とは違う限界点の認識も持つ必要があります。
比較した場合の色の違いは色域と白色点、コントラストの違い、メーカーカラーの違い、そして紙とデバイスの輝度(明るさ)の違いなど様々の要因があり、完全に一致することはあり得ません。
シャープネス処理は、通常の「画像データに対する最適なシャープネス」とは別に、プリント用に再度シャープネス処理が必要になります。最適なシャープネス処理のためには、ます画像サイズを用紙のサイズに合わせてリサイズするとより高精細な出力を行えます。
さらに色見を近づけるためには以下の条件が必要になります。
・モニターで表示される画像とプリントの色見を合わせるためには、「モニター側(表示)の白色点」を出力する「用紙の白色点」に合わせる方がより色見が近づきます。
・環境光としては5000Kの高演色性のライトでプリントを見る方が良いです。
・用紙プロファイルがない時やメーカーが用意したプロファイルで色が合わないなどの時は、分光式センサーと専用ソフトでカスタムプロファイルを作成することで色を追い込めることもあります。
環境光については、プリントを見る為にも必要で演色性の良いスタンドライトなどは常識になっています。最近ではモニターのすぐ上で「環境光」として常備する話題も増えて来ました。
モニターにはフードが必要とされますが、当然モニターに強い光が当たるのはNGです。また、作業するユーザーの目にも光源が直に入らないようにしなければなりません。
モニター環境の作業空間としては、明るすぎても暗すぎてもよくありません。ましてや暗めの室内でモニター上部から手元だけ明るくする環境もあまり良いとは言えません。
可能であればスタジオや関連企業・事務所だけでなく、個人宅であってもモニターで作業する室内環境光は高演色性の光源(ライト)で『空間の色』を整える方が良いです。
🔴モニターとiPadなどデバイスの表示・見え方の違いについて
iPhoneやAndroid、iPadなどのディスプレイの表示は『DisplayP3(DCI-P3)カラースペース』に近い色域(ネイティブプロファイル)で表示しています。
これらデバイスはディスプレイのキャリブレーションが出来ません。白色点は6800K前後(明るさでも変わります)。現在はHDRが主流になりつつあり、輝度も明るく、高コントラスト、広彩度のディスプレイ表示になっていますが、経年劣化にも対応できませんし、デバイスの部材としての色は必ずしも中身が整っているとは言えません。
OSはカラーマネジメントに対応、写真アプリもほぼカラーマネジメントに対応していますので、画像データのプロファイルはディスプレイ上では「こう見えます」と言う表示です。
デバイスのRAW現像アプリで調整して、もし「sRGB-JPEG」として書き出し保存を行う場合は注意が必要です。アプリの作業色空間はデフォルトの「DisplayP3」やさらに大きな「ProPhotoRGB」になっている場合があり、作業中に『sRGBでは飽和・破綻する色』を確認することが出来ず、結果的に書き出された色が飽和していたりする事があります。
スマホを中心にとくにAppleユーザーでは、キャリブレーションした通常のモニターとは色が合わないので、どうせ合わないなら「iMac、MacBookPro、iPad、iPhone」同士ではキャリブレーションなど考えず、デフォルトのままの方が「色が合う」と考えられがちです。一見的を得ているようにも感じられますが、結果だけ見て綺麗だと判断するのはあくまで主観でやはりそれは違います。
よく海外含めて作家の写真が綺麗だと話題になりますが、その作家はキャリブレーション、カラーマネジメントされた環境で画像処理を行い、SNSなどへアップロードしている方も多くいます。それを他者がiPhoneなどで見た結果、個人の好みとして「素敵な画像」と判断している場合も当然ながらあります。
OSやブラウザ、写真アプリなどが「カラーマネジメント」を行っている以上、プロファイルの正確な運用が必要になります。
画像は基準にそった正確な色情報数値をベースに目的に合わせて作成するもので、万が一その画像データを「流通・運用」するとなると他の環境では色が異なっている結果にもなります。
🔴プリントマッチングについて考えます。
プリントマッチングはモニターの表示と出力したプリントとの色合わせです。対で考えるものですが、カラーマッチングはカラーマネジメントと同様の説明をされることもあります。
これに関してはネットや専門書など古くから多くの解説でほとんど同じ説明がされていますが、とくにプリントプロファイルの部分を正しい手順で行うだけですので、今更こちらで書くことはありません。
多くは3つの要素で、「モニターのキャリブレーション」「プリンター出力時の設定・プロファイル指定」そして「環境光」
出来るだけ画像の色味で出力するのであれば、プリンターと用紙に合わせたプロファイルその他を指定します。
モニターの見た目と合わなくても、とにかく綺麗に出力出来ればいいのであれば、色管理をプリンターによる管理にします。
しかし、このジャンルでも、上記のように『モニターのキャリブレーションとプロファイルやその他の設定を正しく行えば色は揃う』と言われることが非常に多いですが、、
色は合いませんよね?画像にもよりますが、冷静に見ればほとんど何処かが合っていません。
どのくらい合っていれば良しとするかは、結局のところ個人単位での妥協点で変わります。
よくモニターの透過光とプリントの反射光などと説明されることもありますが、そんな単純なことだけじゃありません。
こちらもモニター同様に『デジタルそのものの色情報数値』やもちろんCMYKの問題もありますが、物質であるデバイスとの比較になりますので、どれだけ正しい手順を踏んでも100%色が合うなんてことはありません。
ましてや基準値とモニター、モニター同士でさえ正確に合わないのに、さらにそのモニターと『プリンター・プロファイル・インク・用紙』と要因がたくさんある出力物で色が簡単に合うはずがありません。
さらに言えば、そもそもメーカーが用意している各種プリントプロファイルさえ必ずしも正しいとは限りません。
メーカーが提供しているプリントプロファイルが今ひとつ合わない場合や、そもそもプロファイルがない場合は自作します。
じゃ〜...やらなくてもいいの?
と言われても困ります。趣味であれば任意ですし、やはり妥協点は確かにあります。しかし作品であれば尚のこと作家としてどれだけ追い込むのかは人によるのだと思います。
ただ、キャリブレーションやプリント時の設定を正しく行わなければ、結果は物凄く合いません。
では、やるとなった場合デジタルで色を突き詰めるには、とことんあらゆるポイントに努力するしかありません。それは高性能で高価なモニターや高価な測色器の購入。可能な限りパッチ数の多い用紙ごとのカスタムプロファイル作成。さらに環境光やキャリブレーション、それとプリント時の設定だけではなく、キャリブレーションのカスタマイズやソフトウエアでの調整。
通常プリントマッチングは上記3つの要素が多いですが、とことん突き詰めるならお金をかけるだけでなく、手段としてはさらにプラス3〜4つは必要になります。そこまで突き詰めればかなりの色数が合ってきますが、お金や手間暇はかなり必要になります。ましてやそれが沢山ある用紙毎では途方も無いですよね。
*上の画像は「見る環境光によって写真の見え方が違う状態(光源依存性:カラーインコスタンシー)」のイメージです。
環境光については、出力物を見る環境として高演色性のライト下でプリントを見ると言うのも業界常識ではあります。ただ、専用のモニターやキャリブレーションを行うプロも少ない中、専用ライトを持っている方も少ないのも現状です。
光源下でプリントや出力物の見え方がどれだけ違うのかは、簡単に試せますし、一般的な室内灯の下では撮影したデータでさえ「被り」が酷いのは調整すればすぐに分かります。
光源の演色性やメタメリズム(条件等色)などは基本の部分として押さえておく事が望ましいです。
プリントマッチングに関しては、それ以外にも意識することがいくつかあります。
最近はあまり聞かなくなりましたが、紙の品質、蛍光増白剤の有無。インクのメタメリズム。カラーインコンスタンシー(光源依存性)など、認識しておいた方が良いことはまだまだあります。興味があれば是非勉強してみてはどうでしょうか?
実際にプリントマッチングにどれだけ手間をかける必要があるのかは、、とても大変な量になるので書きません。興味のある方はセミナーへどうぞ。